渋沢栄一と輪鼓紋
2019年09月10日
2021年のNHK大河ドラマが渋沢栄一を主人公にした『青天を衝(つ)け』に決まりました。
渋沢といえば、生涯に約500社の創業に関わったという近代資本主義を推し進めた人物です。
大正4(1915)年に刊行された『大正名家録』という紳士録を見ていると、渋沢が明治30(1897)年に創業した渋沢倉庫株式会社が掲載されていました。銀行の担保品を補完するために設立された会社ですが、その頁で目を引いたのが、社名の上に描かれていた社章です。
これは渋沢栄一の生家が藍玉(染料)の販売をするときに用いていた印で、渋沢家では「榺(ちぎり。千切り)」と呼ばれていました。榺とは機織りに付けられていた糸巻のことですが、この家紋の形状は榺ではなく、輪鼓(りゅうご)そのものです。
輪鼓とは子供の遊び道具で、くびれた部分を張った二本の糸の真ん中に乗せて調子をとり、勢いが付くと投げ上げたり、受け止めたりして遊びます。戦前まではよく遊ばれていました。糸を巻き付けるというところは榺と同じなため、渋沢家では輪鼓の紋を榺と呼び、藍玉販売のシンボルマークにしていたのでしょう。
渋沢倉庫株式会社は令和の現在でもこの由緒ある社章を使って事業を展開しています。ここにも渋沢の精神がしっかりと息づいていることを感じます。
ちなみに渋沢栄一の家紋は「丸に違い柏」です。