ファミリーヒストリーの調べ方 役に立つ資産家・地主集成

2019年01月17日


 前回、渋谷隆一氏がまとめられた『明治期日本全国資産家・地主資料集成』(渋谷隆一編 柏書房 1984年)に収録されている「日本全国商工人名録 明治31年版 」が商人や会社経営者を調べるのに大変役立つという話をした。

 渋谷氏はこのほかにも資産家や地主の名簿を編集された本を何種類か出されているが、いずれも家系図の作成やファミリーヒストリーの調査には非常に参考になる。ご先祖が「地主だった」、「資産家だった」、「会社経営者だった」という言い伝えがある場合、必ずこの集成で確認することをお勧めする。これらに記載されていれば、間違いなく地主、資産家、会社経営者である。


 家系調査とは究極のところ、ご先祖の記録を発見するため、まずはご先祖が記されている可能性のある文献・記録をどれだけ思い浮かべるこができるか、ということに尽きる。調査を始めたばかりの方の最初の壁は、ネットなどに書かれている基礎文献を調べたあと、次に何を調べればいいのかが分からないという悩みである。除籍、郷土史と階段を進んで行くとだんだんと先が見えなくなり、どちらに踏み出せばいいのかが分からなくなって立ち止まってしまうのである、しかし、専門家といわれる人たちは、幅広く情報を持っているので、そうそう調べる文献・記録が枯渇するということはない。そして調べていくうちに、どんな小さな手掛かりでも見つかれば、そこを突破口にして芋づる式に関連する記録をたどり、調査を深めていく手法にたけている。それが専門家というものである。この能力を身にたけるためには、常日頃から渋谷氏の文献などにどのような名簿が収められているかをそらで言えるくらい暗記していることが不可欠である。

 では、渋谷氏の本を2冊紹介しよう。


『大正昭和日本全国資産家・地主資料集成』 渋谷隆一編 柏書房 1985年


第1巻 

石山昭次郎著. 全国五十万円以上資産家表 

時事新報社編 大正5年.大日本資産家大鑑 

岡野保編 大正15年.全国金満家大番附 

帝国興信所調査 昭和5年.全国多額納税者一覧 

東京尚文社調査 昭和5年.五十万円以上全国金満家大番附 

帝国興信所調査 昭和8年.全国多額納税者一覧 

東京尚文社調査 昭和8年.五十町歩以上ノ大地主 

農商務省農務局調査 大正13年.五十町歩以上林地所有者名簿 

農林省地方林務部編 昭和24年.明治中期の大資産家名簿 

渋谷隆一,石山昭次郎編. 大正初期の大資産家名簿 

 

第2巻~第3巻 

内務省警保局編 大正14年.  貴族院多額納税者互選資格者見込表 


第4巻 

石山昭次郎著. 貴族院多額納税者議員互選人名簿 

『時事年鑑』所収 大正7年.貴族院多額納税者名鑑 

織田正誠編 大正14年.多額納税者名簿 

『日本紳士録』所収 昭和7年.全国貴族院多額納税者議員互選人名総覧 

銀行信託通信社編 昭和14年.同上


 第5巻 

石山昭次郎著. 全国大株主 時事新報社調査 

明治32年.全国株主要覧 

ダイヤモンド社編 大正五年.全国株主年鑑 

経済之日本社編 大正14年.同上


 第6~7巻 

ダイヤモンド社編 大正8年 全国株主要覧 


『都道府県別資産家地主総覧』  渋谷隆一編  日本図書センター  1988年

  財閥、大地主、資産家 などが掲載されている全国各地の名簿、長者番付、商工人名録などを都道府県別に集成したもの。

 氏名、住所、氏名、職業、資産額、所得税、営業収益税、地価、所有耕地 反別などを知ることができる。


第Ⅰ期 関東編
<東京編>     4巻 
<神奈川編>    1巻
<茨城編>     1巻 
<栃木編>     1巻
<群馬編>     1巻
<埼玉編>     1巻
<千葉編>     2巻 
 全11巻


第Ⅱ期 近畿・旧植民地編
<近畿編>     1巻
<大坂編>     3巻
<京都編>     2巻 
<兵庫編>     2巻
<奈良編>     1巻
<滋賀・和歌山編> 1巻
<旧植民地他編>  2巻 
 全12巻 

第Ⅲ期 東北・北海道編
<東北編>     1巻
<青森編>     1巻 
<岩手編>     1巻 
<宮城編>     1巻
<秋田編>     1巻
<山形編>     2巻
<福島編>     2巻 
<北海道編>    2巻
 全11巻


第Ⅳ期 中部編
<新潟編>     3巻 
<富山・石川・福井編>1巻
<長野編>     1巻 
<山梨・静岡編>   1巻
<愛知編>     3巻 
<岐阜・三重編>   1巻
 全10巻

第Ⅴ期 中国・四国編
<鳥取編>     2巻
<島根編>     2巻
<岡山編>     2巻 
<広島編>      1巻
<山口編>     1巻
<徳島・香川・高知編>1巻 
<愛媛編>     1巻 

 全10巻


第Ⅵ期 九州・沖縄 補遺他編
<九州編>     1巻 
<福岡編>     3巻
<佐賀・長崎編>  1巻 
<熊本編>     2巻
<大分編>     1巻
<宮崎・鹿児島編> 1巻
<沖縄編>     1巻 
<補遺他編>    1巻 
 全11巻


 内容はどのようなものかというと、先行して発刊された『明治期日本全国資産家・地主資料集成』(全5巻)、同『大正・昭和日本全国資産家・地主資料集成』(全7巻)が全国版の名簿を収録したのに対して、この『都道府県別資産家地主総覧』 では府県あるいは郡の規模で調査、編集された資産家・地主名簿を数多く収録している。たとえば、第Ⅰ期 関東編<東京編>4巻には次のような名簿が収められている。  

東京持丸長者鑑
栄誉鑑
武蔵国三多摩郡公民必携名家鑑
東京資産家録
商工業・庶業ノ所得大納税者調
東京地主案内
東京市大地主
東京市及接続郡部地籍台帳
東京市内に於ける宅地外土地調査書
五十町歩以上ノ大地主
日本全国商工人名録・第二版(東京府銀行会社;東京府多額納税者)
日本全国商工人名録・第五版
大日本商工録