ファミリーヒストリーの調べ方 『大衆人事録』

2018年12月09日


 戦前にご先祖が役人だった、職業軍人だった、素封家だった、それなりの会社の管理職だったという話を聞くと、まず調べるのが『大衆人事録』である。昭和初期の同様の名簿には第三種所得税(個人所得税) を50円以上納税している者を記載した『日本紳士録』や、『人事興信録』などがあるが、内容がもっとも詳しいのは『大衆人事録』である。この名簿に記載があれば、その人物の詳しいプロフィールを知ることができる。経歴だけではなく、士族か平民か、趣味、宗教、家族状況も判明するので大変に役立つ。

 第二次世界大戦の真っただ中だった昭和17年(1942)に刊行された『大衆人事録』第14版は、


第1巻 東京篇

第2巻 北海道・奥羽(東北)・関東・中部篇

第3巻 近畿・中国・四国・九州篇

第4巻 外地・満支(満州・支那)・海外篇


 からなり、収録されている人数は15万1,000名あまり。国立国会図書館デジタルコレクションにあり、ネットで全頁を閲覧することができるが、『昭和人名辞典』(日本図書センター)から復刻版も出ている。この『昭和人名辞典』は国立国会図書館でもっとも閲覧される本ともいわれ、ファミリーヒストリーの調査だけではなく、近代史を研究する人々にとって必読の辞典となっている。

 あなたもご先祖の名前があるかどうかをお調べになってみたらいいだろう。もしもあれば名家の証であるとともに、一気にファミリーヒストリーを解明する手掛かりが手に入ることになる。

 参考に山本五十六の項を転載しておく。旧字体は新字体に変換し、閲歴には適時スペースを入れ読みやすくし、()の注記を加えた。


山本五十六 

正四位勲一功ニ 海大将 連合艦隊兼第一艦隊司令長官 赤坂区青山南町六ノ八一 電青山二七〇三 

〔閲歴〕

新潟県高野貞吉六男明治十七年四月生れ 先代タマシの養子となる 同三十七年兵学校卒業 任海少尉 日露戦役出征 昭和十五年十一月海大将に累進其の間霞浦海軍航空隊教頭兼副長 米国大使館附武官 五十鈴赤城各艦長 航空本部技術部長 第一航空戦隊司令官 軍令部出仕兼海軍省出仕 海軍次官兼海軍航空本部長等歴補 昭和十四年八月現職に任ず 同四年倫敦(ロンドン)海軍会議の全権委員随員 同九年倫敦軍縮会議代表を被命 同十六年十二月米英両国と開戦劈頭の大戦果により畏くも勅語を賜ふ 宗教曹洞宗 趣味スポーツ

〔家庭〕

妻 レイ(明元)福島県三橋康守三女 長男義正(大ニ)府立一中卒 長女澄子(大一四)山脇高女在 二女正子(昭四) 二男忠夫(昭七)


 父祖が士族の場合は氏名の前に士族と記載されている場合が多い。山本の父親高野貞吉は旧長岡藩士で士族だが、士族の称号は冠せられていない。