家系図の話 戸籍に出てくるさまざまな家の名称
戦前の旧民法のもとで作製された除籍簿を読み解いていると、さまざまな家の呼称が出てくる。旧民法のもとでは家制度が重要であったから、家を細かく規定するのは当然だが、現在では用語から意味をすぐに判断できないものもある。
本家と分家
ある家から出て新しく一家を創立することを分家という。分家には本家の廃絶を救う義務があった。ただし、家族の一員が戸主から離籍されて一家を創立した場合(旧民法742条)と嫡出ではない子が父の家にも母の家にも入れないで一家を創立した場合(旧民法735条)は、これを分家とはいわず、関係するどの家とも本家、分家の関係は生じない。
同家
ある本家に2件の分家がある場合、その2件の分家は同家と呼ばれた。ただし戸籍の記載で使用されることはほとんど無い。
実家
婚姻または養子縁組によって家族が他家に入った場合、従来属していた家を実家と呼んだ。離縁された者が復帰する家がこの実家である。
婚家
婚姻によって夫または妻が新しく入った家のことをいう。
養家
養子縁組によって新しく入った養親の家を養家という。
他家
ある家からみて自家以外の家はすべて他家という。
廃家
戸主がその家族を連れて他家に入ったため消滅した家を廃家という。実際によくある例としては、二、三男が分家して一家を創立したが、長男が跡継ぎを残さないで亡くなってしまったため実家に戻ると、新しく創立した家(分家)は廃家となった。また、分家に跡継ぎができなかった場合も廃家して実家に戻ることがあった。廃家はよく登場する記載である。
絶家
家が戸主を失って家督相続人がいないため消滅した家のこと。明治初期には兵役を回避するため絶家再興願を提出して絶家を継いで戸主となる者がいた。絶家は親戚であれば再興できる定めになってはいたが、親戚の範囲があいまいだったため、親戚ではない者が絶家を再興した例もあったと推測される。
総本家
明治31年施行の民法で使用が廃止された用語だが、一族の根源となる本家のことをいう。この記載を見ることはまずない。
末家
これも同じく旧民法で使用が廃止となった用語だが、分家からさらに分家した家のことをいう。この記載もまず見ない。
合家
やはり旧民法で使用が廃止となった用語で、二つの家を合わせて新しく一家を創設することだが、やはり見ることは非常に稀な記載である。