幕臣・藩士の本棚
江戸時代(1603-1867)、幕府に仕えていた武士には将軍に拝謁(御目見)できる旗本、拝謁できない(御目見以下)の御下人がいました。両方をあわせて幕臣といいます。北町奉行の遠山左衛門尉景元や火盗改の長谷川平蔵宣以などは旗本で、その系譜は『寛政重修諸家譜』全26冊(略して『寛政譜』)に収録されています。同書は幕府によって文化9(1812)年に編さんされ、大名と旗本2,132家の詳細な系譜が掲載されています。旗本の家系を調べるとき、まずはこの本をひもときます。
『寛政譜』以降の系譜については、小川恭一氏の『寛政譜以降旗本家百科事典』全6巻、『江戸幕府旗本人名事典』全4巻によっておおよそ知ることができます。また熊井保氏は国立公文書館所蔵の多聞櫓文書のうち、判読可能な「明細短冊」と「由緒書」を翻刻、編集してまとめた『江戸幕臣人名事典』を出しています。明治2(1869)年に江戸から駿府藩(静岡藩)に移った幕臣の名簿は前田匡一郎氏の『駿遠へ移住した徳川家臣団』全5編にまとめられています。いずれも労作です。
旗本の暮らしについては小川恭一氏の『江戸の旗本事典』が手軽で読みやすいでしょう。『図録 近世武士生活史入門事典』のような本もあります。役職についていた幕臣は武鑑で調べることもできます。武鑑とは何かについては藤實久美子氏の『江戸の武家名鑑』を読まれると良いでしょう。武鑑に出てくる役職については笹間良彦氏の『江戸幕府役職集成』で調べます。諸藩の役職を調べる時も幕府に準じている部分が多いので、参考になります。
諸藩のおもな家臣については『三百藩家臣人名事典』全7巻が非常に役立ちます。江戸時代に存在した約250藩を地域別に分冊し、藩ごとに主要な藩士を五十音順に配列して詳しい履歴を載せています。藩の歴史や職制については『藩史大事典』全8巻で確認します。とくに職制については分限帳などを基に図で示されているので、大変参考になります。