家紋の本棚


 家紋のもっとも手軽な入門書としては、丹羽先生の『家紋と家系事典』が文庫本サイズで読みやすいでしょう。すこし専門的なものとしては沼田頼輔博士 の『日本紋章学』があります。これは昭和12(1926)年に帝国学士院恩賜賞を受賞した古典的な名著です。博士には一般者向けに書かれた『紋章の知識100』などもありますから、まずはこのあたりから読まれることをお勧めします。


 個々の家紋の由来を詳しく解説したものとしては丹羽先生の『家紋百話』上下巻があります。また推理作家であると同時に、家紋を描く上絵紋章師でもあった泡坂妻夫氏の『家紋の話』は職人の視点から家紋を論じており、非常に興味深い内容です。また、日本には女紋という習慣があります。これは嫁いだ女性が実家の家紋を使い続けることで、地域によって方法も使う家紋も異なりますが、女紋については近藤雅樹氏の『おんな紋』が参考になります。


 江戸時代には切り紙で家紋をつくる「紋切り」が流行りました。江戸では手妻(マジック)として演じられていました。折り紙を幾重にも折り畳み、ハサミで切って広げると、複雑な形の家紋ができあがる紋切りは後世に伝えたい江戸の伝統的な遊びです。


 家紋の図鑑としては、丹羽先生の『家紋大図鑑』をお勧めします。歴史的に使用されてきた7,500類の家紋を図版で掲載し、素材ごとに歴史解説がつけられています。また家紋について深く学びたいときには沼田博士の古典的な名著『日本紋章学』、あるいはそのダイジェスト版である『綱要 日本紋章学』を読むことになります。