家紋のQ&A


Q  家紋から分かることはありますか?

A  家紋は名字と同じころに発生し、まるで名字に連れ添う妻のように現在まで伝わってきました。その種類は微細な変化を数えると約3万に達するともいわれていますが、基本的な図形は6.000種ほど。ある家のルーツを推測するときには、家紋を利用することがあります。たとえば四つ目結いという家紋は第59代宇多天皇(867-931)の流れをくむ宇多源氏佐々木氏族の子孫が愛用した家紋として知られていますから、この家紋を使っている家は佐々木一族の子孫か、佐々木氏に仕えていた家臣の末裔かも知れません。田中さんのように源氏や平家など複数の系統から出ている場合、苗字だけではどの系統なのかが全く分かりません。しかし、田中という苗字に三つ巴という家紋の情報がプラスされると、にわかに茨城県つくば市田中から発祥した藤原北家の流れである可能性が高まるのです。それはこの田中さんが三つ巴をよく使うことが記録などから分かっているからです。このように家紋はルーツを推測する上で、重要な役割を果たしており、「苗字を絵化したもの」とも言われています。


Q  家の家紋が分かりません。知る方法はありますか?

A  まずは菩提寺か、霊園にあるお墓を確認してください。そこに彫られていなければ、親戚の高齢者に訊ねてみてください。それでも分からなければ、古い写真を調べてみてください。着物に家紋が描かれていることがあります。それでも分からなければ、除籍を取り寄せてご先祖が江戸・明治時代に住んでいた本籍地を調べてください。そして、その本籍地に現在、同姓の家があるかどうかを電話帳で確認してください。全国の電話帳は紙物は大きな図書館にありますし、電子電話帳も販売されています。ネットでも電子電話帳を公開しています。探してみてください。ご先祖の本籍地に同姓がいた場合、除籍から知りえたご先祖を系図に書いて同姓の家に送ってください。この系図の中に聞いたことのある人がいるかどうかを訊ねるのです。そして、もしもいればその同姓はあなたの親戚です。家紋を教えてもらってください。その家紋が、まず間違いなくあなたの家の家紋です。現在、墓石に彫られている家紋が正確かどうか分からないという場合も、この方法で確認をとることができます。 


Q  うちの家紋は誰が決めたのか分かりますか?

A  それはまず分かりません。通常、古い時代に書かれた家系図を見ても、家紋を使い始めた人物についての記載はほとんどありません。大名の伊達、黒田、山内氏、戦国大名の葛西氏などでは分かっていますが、これは特別な例です。ただし、家紋の形状から使い始められた古さを推測することはできます。家紋の歴史をたどってみると、時代が下るにつれて図形が複雑になり、外郭などのデコレーションが付けられていったことが分かっています。そういう目で家紋を見ると、丸のある家紋は丸の無い家紋よりも新しい可能性が高く、蔦などもシンプルな蔦よりは中陰蔦のほうが新しい家紋であることが分かります。これが何も記録が残っていない家の、家紋の使用起源を推測する限界でしょう。


Q 女紋というのは何ですか?

A  女紋というのは女性が専用で使う家紋のことです。現在でも関東(新潟~茨城ライン)以西で見られます。女紋の習慣のある地域では、嫁いだ女性は、妻になったあとも夫の家の家紋ではなく、実家から持ってきた家紋を使います。実家の家紋は母親から譲られることもあれば、父親の家紋の場合もあります。女紋は女性の家紋ですから、草花が好まれます。父母の家紋のうち、ふさわしいものを選ぶこともあります。母親から譲られる場合は母系継承という形になり、祖母から母、その娘へと引きつがれてゆきます。なかには嫁いできた妻に使わせる女紋を決めている家もあります。そういう家の女紋も桔梗や藤、蔦など植物系が好まれます。この女紋の習慣は中世以来武家社会では夫婦別姓だったことに由来すると考えられますが、北海道は行われていません。


Q 本家と分家で家紋が違うんですが、なぜですか?

Q  本家と分家は苗字を変えて本支関係を明らかにすることもあれば、家紋を変えて区別することもありました。家紋の場合、分家の家紋は本家の家紋に比べると複雑化しているのが一般的です。丸などの外郭を付け加えることもありました。そもそも近世の村落における同族という概念は広く、元は奉公人であったり、その家に草鞋(わらじ)を脱いだ他人をも含むことがありました。そういう非血縁の擬制同族を持っている場合、これを家紋の違いによって区別しようとしたのです。家系調査を行う場合は、ご先祖が住んでいた地域に住む同姓全員にアンケートを送ることをお勧めします。これによって同姓間の本家・分家関係、家紋などのデータを集め、系図化すると、その地域の同姓がどのようにつながっているか、またはつながっていないかが明らかになるからです。このような同姓調査は個人の家系調査の枠を超えて、地域史研究に貢献する本格的な調査ということができます。